5月、この時にしたアドバイスの実施状況を確認するために、いくつかの供与機材をもって再び幼稚園を訪れました。機材は基本的なもので、川から汲んだ水を溜めておくための貯水タンク、手洗い用のタンク、そして大きな鍋。父母たちが新しく造った学校菜園からサツマイモが穫れた時に茹でるためのものです(写真1)。でも持って行ったのはそれだけではありません。日本のある支援者さんから届いたストローと牛乳パックでできた竹とんぼ90機を忍ばせていたのです。
- 写真1「運営委員や父母の見守る中、手洗い用タンクを手にする園児」
- 写真2「試行錯誤で飛ばし始めた年長さんたち」
先生が園庭で竹とんぼを飛ばして見せると、年長さんは列を作りました。初めて見る竹とんぼ。試行錯誤で飛ばしているうちに、驚きや笑い声が広い園庭に響き始めました(写真2)。すると、1人、2人と年少さんが教室から出てきていつの間にか3人だけを残し、外では全員が笑い声をあげています。そしてとうとうその3人も、我慢ができなくなったのでしょう、先生が小声で、「全員外に出ましたよ」と教えてくれました。遠くから眺めていた私はその時、幼いころに母から聞いた日本神話を思い出しました。天の岩戸からついに姿を現す天照大神のくだり。
(↑動画)初めて竹とんぼを飛ばすチェモソゴン幼稚園の園児たち。地面に見える黄色い小さな容器には、家から持ってきた薄いミルクティーが入っていることが多い。家から何も持ってこない園児も多数いる。給食が始まれば、皆が温かい雑穀粥を食べてから家路につくことができるようになる。
竹とんぼは、小さな華奢な体で、でもくるくると勢いよく高く飛んでいきます。たいてい、どちらの方向に飛んでいくかは分かりません。好きな方に飛んでいくのです。この子達も、竹とんぼのように高く勢いよく育って行ってほしい。それを可能にするのは、私たち多くの大人たちです。
<チェモソゴン幼稚園のその後1>
5月26日、チェモソゴン幼稚園は、HANDSの発案で、保健局と教育局の支援を得て半日の学校行事「サテライト幼稚園栄養デー」を開催しました。
年少さんは朝から元気よく、私を「例の」教室に招き入れてくれ、私が竹とんぼをくるくると飛ばす大げさなジェスチャーをすると、「覚えているよ。あの時の竹とんぼおばさんね」と言わんばかりに、にこりと目で挨拶してくれました。
多くの父母が見学する中、成長モニタリングが始まりました。保健局地域保健チームが栄養士と共に、手際よく園児の身長と体重を測ります(写真3)。
初めて見る身長計に泣く子は一人の年長さんだけで、皆勇気がありました。栄養士さんは心配のある園児のお母さんやお父さんを丁寧に指導しました。身体測定が終わると、園庭で待ち受けていた教育局地域担当官のもとに行き、絵本を読んだり集団遊びをしました。その後は、開設されたばかりの学校菜園に見学のおうちの人と行って、地域保健推進員さんの家庭菜園のお話を皆で聞きました(写真4)。
最後は、運営委員会が、見学の大勢の父母の前で園児たちに雑穀粥を振舞ってくれました(写真5)。これは、チェモソゴン幼稚園での記念すべき初めての給食でした(補2)。
- 写真5「幼稚園で温かい粥を初めて手にする園児」
- 写真6「粥を試食しながら栄養の話を聞く母親たち」
訪れた父母たちの前で、はにかみながらお代りまでする園児。給食開始への協力を呼びかける絶好のチャンスを運営委員会はこうして掴んだのです。後で知ったことですが、この日の雑穀粥は特別なレシピでした。地域保健推進員さんが、HANDSのプロジェクトの研修で習った焙煎大豆入りの香り高い雑穀粥を手作りしてくれていたのです。
成長モニタリングで分かった園児の栄養状態は、HANDSが心配していたほど悪くなく、栄養士の指導の必要な園児は12人。大部分が軽度の栄養不良で、重度栄養不良は3人でした。若年結婚の多いこの地域一帯で、幼稚園を中心に栄養改善をするのは意義も効果も大きいです(写真6)。
<チェモソゴン幼稚園のその後>
6月4日 チェモソゴン幼稚園を支援している地域保健推進員さんの一人から、電話がありました。先月26日のチェモソゴンサテライト幼稚園栄養デー後の父母たちの話し合いで調理師さんが決まり、次の日から園児は毎日給食を食べているそうです(写真7)。
チェモソゴン幼稚園の園児たち。竹とんぼのように、くるくると楽しそうに勢いよく巣立って行ってくれるに違いありません。
八木志津子
HANDSケニア事務所プロジェクトマネジャー
(補2)HANDSが幼稚園学校給食で推奨してきた砂糖抜きの雑穀粥は、家庭の給食費負担を大幅に軽減することで、1年を通して継続できる給食を可能にしてきました。さらに、併せて学校菜園も推奨することで、幼児に必要な栄養を豊富に含むサツマイモやニンジン、食材の自給を助けるためのヒエの栽培を通し、栄養強化と給食費軽減に貢献しています。2026年にはケリチョー郡幼児教育局がこの方式を採用し、現在700校に及ぶ幼稚園で試みられています。







