ケニア事業:「竹とんぼ」事業終了前に思うこと(1)

日本とケニアの多くの方々に心温まるご支援を賜り、幼児の栄養改善プロジェクト(補1)は今月、3年半の幕を閉じます。ケリチョー郡の4つの幼稚園を中心に、2歳から5歳の幼児約600人の栄養改善のため、その家族、学校関係者、保健局、教育局、農業局、そして地域保健推進員 さんたちと共に歩んできました。
 

4-Kクラブ員が地域保健推進員と共にモデル学校菜園で作業

 

私たちは色々なことを学びました。公的な財政援助がなくても家族だけの力で、ちょっとした工夫で立派な幼稚園給食が継続でき、多くの幼児が主食メイズの収穫を待つ辛い時期でも重度の栄養不良に陥ることなく幼稚園に通うようになりました。家族は、定期的に訪れる地域保健推進員さんのアドバイスで家庭菜園に多様な作物を栽培し、幼児の食事の前の手洗い習慣を見守るようになり、幼児たちは病院に行く回数が次第に減りました。お母さん達はおやつの重要性を知り、幼児たちはお茶だけでなく果物や雑穀粥、卵も食べるようになりました。小学生の姉や兄たちは、一緒に楽しく遊ぶことも弟や妹の元気な成長の助けになることを学びました。小学校の農業クラブ員たちは、学校モデル菜園でサツマイモや大豆を育て、幼稚園給食の栄養強化を積極的に助けました。幼稚園の調理士たちは、特別な日には大豆入りの香り高い雑穀粥を作り園児たちを喜ばせました。そして、幼稚園の先生たちは幼児の身体測定を定期的に行い貴重なデータを入手し、保健局と連携し保護者への指導に当たりました。

そしてこれら一つひとつの努力が、今後も幼稚園を中心に続き、そしてさらに広い地域へと波及していくよう、「幼稚園栄養デー」という学校行事も始めました。これには、はるばる首都ナイロビから教育省の役人が視察に訪れもしました。

さて、3年半のプロジェクトの歩みをごく簡単に述べてみましたが、報告の最後はチェモソゴン幼稚園でのある日の出来事で締めくくりたいと思います。
チェモソゴン幼稚園は、年長さんと年少さん合わせて約60人の比較的規模の大きい幼稚園ですが、多くの幼稚園が小学校の校庭内に建ち小学校の校長先生の下で運営されている中、本校の小学校から離れた場所にまるで人工衛星のようにポツンと建ち、地域の代表で組織される運営委員会と幼稚園教諭2人のみで運営されています。HANDSではこういった幼稚園をサテライト(人工衛星)幼稚園と呼んでいます。残念なことに、教育局からの公的援助や本校からの補助が十分でなく、しかも幼稚園の先生の一人は父母会が雇用していることが多いため、財政状況は大変厳しいです。チェモソゴン幼稚園では過去に給食を開始しようとしましたが、多くの幼稚園がそうだったように失敗しています。

そんなチェモソゴン幼稚園は、本校カプクレス小学校のサテライト幼稚園2校のうちの一つ。HANDSはカプクレス幼稚園をプロジェクトで支援してきました。プロジェクトの後半になって、次第に周辺の幼稚園からHANDSへの支援の要請が聞かれるようになり、4月、チェモソゴン幼稚園に対して園児の栄養状態の向上のために幼稚園と父母だけでできることをアドバイスするため、その準備として初めて幼稚園を訪れました。
車を降り広い園庭に足を踏み入れると遠くから泣き声が聞こえてきます。1人ではなく大勢の泣き声です。幼稚園にあがってまだ数か月の年少さんの教室からでした。初めて見る「肌の色の違う人」に恐怖を覚え、全員で教室に隠れ全員で泣き出したのです。ケニアで仕事をしていると、小さな子供たちは私を見て驚きのあまりその場で目をむき固まってしまう、という反応にはよく遭遇しましたが、こんなのは私の方も初めてです。運営委員さんや先生、父母代表とのミーティングが終わっても、年少さんは一人として教室から出てきませんでした。

(補1)プロジェクト名「地域に開かれた幼稚園‐ケニア共和国ケリチョー郡の幼児の栄養改善に向けて」(JICA草の根パートナー型 2022年‐2026年)

(その2に続く)