ケニア栄養改善事業:”Win-Win”の仕組み、できないだろうか?(2)

HANDSケニア事務所の栄養改善事業について:HANDSケニア事務所が幼児の栄養改善に向けた取り組みを始めて6年。今年、2023年1月に本格的に開始したJICA草の根パートナー型事業「地域に開かれた幼稚園:ケリチョー郡の幼児の栄養改善に向けて」(期間3年半)は、引き続き幼稚園を中心に、改善メニューによる給食、幼稚園教諭による園児の身体測定、学校関係者と地域保健ボランティアによるモデル学校菜園の設立と運営、さらに就園前の2,3歳児向け親子学級を新たに加え、これら主要プログラムを強化し発展させながら地域全体で幼児の栄養をさらに改善していこうという試みです。今回は本事業の中ですすめている「幼稚園モデル学校菜園活動と小学校農業クラブの協働」について3回に分けてご紹介します。

(第1回の記事はHANDSのホームページ、フェイスブックでご覧になれます。)
第1回はこちらから→ https://www.hands.or.jp/kenya-winwin1/

←(写真)農業科教諭、運営委員長、準郡農業局員とHANDSスタッフによる分析(カプクレスA幼稚園)

実はHANDSでは2017年から別地域の幼稚園を対象に同じ菜園活動を推進してきたが、前事業終了直前2022年時点での継続率は、同時に推進してきた改善メニューによる給食の100%に比べるとかなり低い。モデル菜園活動は、父母やボランティアが学校運営委員会に協力する形で維持・管理するのが基本だが、運営委員会の再選、校長の異動、といった組織の交代時はもとより、学校関係者や父母やボランティアたちの関心が時とともに薄れることで継続が危うくなる活動だ。事業終了後の行く末に思いを馳せていた時、前大統領の再興の声がけで各地で誕生しつつあった新しい4-K農業クラブ との協働という案を思いついた。

幼稚園のモデル菜園活動と小学校の4-Kクラブ。それぞれのニーズ、強み、弱点を、小学校農業科教諭、学校運営委員長、農業局員と共に簡単に分析してみることにした(写真)。結果は、1)幼稚園モデル菜園は維持するための人員を組織し継続して動員するのが難しい。一方4-Kクラブには、実践しながら学ぶ、をモットーにしたクラブ員が多数おり、これは4-Kクラブが存続する限り綿々と続く。2)モデル菜園活動には、HANDSの事業に参加し農業栄養と有機栽培を学んだ学校関係者がおり、さらに普及にも携わっている地域保健ボランティアや地域住民もいる。彼らは4-Kクラブが求める地域の人的資源となれる。3)4-Kクラブが推進する5つの新しい領域の一つが農業栄養。モデル菜園は地域に合った農業栄養を学ぶ場そのものを今すぐ提供できる。ところが一つ補完し合えないことがある。モデル菜園はもともと利益を作り出すために考えられた菜園ではないため、4-Kクラブに必要な財政面での支援ができない。先生方に伝統野菜を売っても、せいぜい1年間で2,000シル(2千円)にしかならない。せっかく4-Kクラブメンバーが菜園で父母やボランティアたちと手分けして草むしりしたり、収穫や堆肥作りを手伝っても、クラブの財政の足しになるような金額を分けることは残念ながらできない。収益が出せるように菜園を作り変えることも検討したが、幼稚園モデル菜園の本来の意義や目的、そして幼稚園と園児にオーナーシップがあることは皆で守っていこう、という合意に至った。この事業を仕掛けたHANDSとしては嬉しい。農業局員は、クラブ運営の財政面に関するアドバイスを提供し、HANDSからは他事業アグロフォレストリーで、木の苗を育て売ることに成功している小学校の例などを紹介した。各校の運営委員長と農業科教諭は、これらの話し合いをまとめ、さらに各校で望む4-Kクラブの将来像を交え、20分の発表に仕立て農業省本省からの訪問者が来る日を待った。