
(写真1)「後ろに立っているのはカプレリット幼稚園を支える最強のマルチセクトラルチーム。地域保健アシスタント、地域保健プロモーター、栄養士、農業普及員、地区幼児教育担当官、幼稚園教諭、幼稚園調理士、小学校健康科教諭、小学校農業クラブ顧問、HANDSスタッフ。教育省本省幼児教育課からの視察団と共に」
この決定は、HANDSの栄養事業にとっても重要な意味を持つ。幼児の栄養改善事業は5つの主要プログラムを柱にしているが(※補記4)、その一つ、プレイサークルという2,3歳児対象の親子教室はこのフレームワークを指針として2年前マルチセクターで設計したものだ。保育所ではなく、親と子を同時に対象にする教育的な試みは彼らにとっては新しく、そんな中、一人の子供の多様なニーズが家庭で整えられることが分かりやすく示せるこのフレームワークは、親や家族の関り方の重要性を示唆してくれた。
さて、このプレイサークルは、保健局地域保健から地域保健アシスタントが、統括している地域保健プロモーターたちと共に毎月提供している。公教育の対象年齢ではないが幼稚園を監督している小学校長の協力で教室を拝借しての開催だ。プレイサークルの活動は、成長モニタリング、親と子の遊びの時間、健康・栄養に関する情報の時間、最後にその日のテーマに沿った間食の試食という流れになっている。地域保健プロモーターたちは、これらの4つの活動を主導できる知識とスキルとをこれまでHANDSが提供してきた研修で学んでいる。中でも、親と子の遊びの時間では、歌や遊びを通した幼児との接し方の模範を親に示し、親の我が子への積極的な関りを促すことが期待される。地域保健プロモーター養成時の基本技能の中にはない新しい技能だ(写真3)。地域保健プロモーターは参加幼児たちの祖父母の年代の男性が多い。最初戸惑いも見られた。このNurturing Care というフレームワークが、ケリチョー郡の地域保健や母子保健分野で頻繁に語られるようになるのも時間の問題だろう。そして、マルチセクトラルアプローチを一層推進することになるだろう。そんな時、幼児の発達を健康や栄養だけでなく包括的に捉えたマルチセクターによるプレイサークルプログラムを通し、地域保健プロモーターたちにマルチセクトラルアプローチの体験と、その中でセクターを超え実践できる技能を提供できたことを嬉しく思う。(終わり)
(※補記1)事業名:「地域に開かれた幼稚園:ケニア国ケリチョー郡の幼児の栄養改善に向けて(JICA草の根パートナー型2022年から2026年)」
(※補記2)ECD Network for Kenyaの略称。調査研究機関だけでなく広く市民団体も参加しているケニアの幼児教育学会のような団体
(※補記3) サムネイルの写真参照。5つの構成要素は、健康、栄養、安全・保護、学習の機会、これら全部を守る責任ある育児(筆者による訳)。詳しくはhttps://www.unicef.org/media/108796/file/Vision%20for%20Elevating%20Parenting.pdf
(※補記4)1.幼稚園と小学校健康科教諭による園児の成長モニタリング;2.幼稚園給食(10時のおやつ);3. 幼稚園モデル学校菜園;4.家庭訪問による食事調査と家庭菜園・栄養・衛生アドバイス;5.月例プレイサークル(2,3歳児の親子教室)