「職員たちと共に-創作絵本“おばあちゃんがくれた不思議なめんどり”」(1)

HANDSケニア事務所のあるここケリチョー郡は、キプシギス人の暮らす土地である。キプシギスはカレンジン族に属する8つの亜部族の一つで、キプシギス語を話す。一般的に彼らは土地を持ち耕し家族で食べるメイズ(主食の原料のトウモロコシ)は自家製であることを誇りに思い、牛を育てムルスィックという牛乳から作った発酵飲料で客を歓待し、キリスト教会に通う。

そんな土地に、幼児の栄養改善に役立てられそうなある風習があることを知った。お祖母さんが、2歳ぐらいになった孫にめんどりを贈るというものだ。そしてこのめんどりはその子の所有となり、動物の世話の仕方を習ったり責任というものを学んだりする体験を提供する。キプシギス人であるHANDSケニア事務所職員の多くも「幼い時に自分ももらった」とか「娘たちがもらった」などという経験がある。

HANDSケニア事務所では2017年から幼児の栄養改善事業を実施してきたが、行動変容にヒントを得たちょっとしたアイデアを具体化したのは2019年住民参加で幼稚園に建設したトイレの壁画のデザイン(写真1)が最初で、園児に手洗いの習慣をつけてもらうためのもの。
↑(写真1)トイレの壁画(ニャベリ幼稚園)

そして2回目は現在実施中のJICA草の根技術協力事業「地域に開かれた幼稚園:ケリチョー郡の幼児の栄養改善に向けて」で、この風習を基にした絵本の創作。家庭での幼児の卵の摂取を増やすことを目指している。

HANDSの事業地では、養鶏は一般的に営まれているものの卵は換金に便利なためほとんど売られてしまい、家庭で消費するとなってもたいていは父親の口に入ってしまうらしい。昨年11月に実施した2歳から5歳までの幼児のある一日の食事調査では、その日に卵を食べた幼児は52人中7人(男児4:女児3)だった。

←(写真2)農業局員のモニタリングに参加する地域保健ボランティア(カプレリット幼稚園のモデル菜園)

事業地では幼児の低栄養はところによっては3割から4割に上り、プロジェクトでは、幼稚園でのモデル菜園(写真2)を中心にした家庭菜園の普及、幼稚園での10時の“おやつ”給食(写真3)や成長モニタリング(写真4)、2,3歳児の親子教室での幼児の間食の試食会(写真5)や体重測定(写真6)といった活動を通し、バランスの取れた食事のほか、ビタミンAの豊富な野菜や果物の摂取促進に加え、卵が幼児の優れた栄養食品であるという認識を広め摂取量の増加に結びつけようとしている。
↓(写真3)モデル菜園で採れたサツマイモと雑穀粥の給食(カボセンオ幼稚園) ↓(写真4)園児の身長測定(バルゲイエット幼稚園)


↓(写真5)試食をしながらHANDSの栄養士の話を聞く幼児と母親たち(カプクレスA幼稚園)
↓(写真6)地域保健ボランティアによる体重測定(2,3歳親子教室)