ケニア事業:新しい給食レシピの誕生(2)

HANDSケニア事務所は、3年間にわたる幼児の栄養改善プロジェクト、平成30年度外務省NGO連携無償資金協力による「ケニア共和国ケリチョー郡ECDEセンターを中心としたコミュニティによる幼児栄養改善事業」の期間延長の後、今その終了を2か月後(7月中旬)に控えています。とはいえ、これまで共に歩んできたケリチョー郡の幼稚園31校の日々の経験に耳を傾けそこから学ぶことを止めてしまったわけではありません。

プロジェクトで推進してきた幼稚園での栄養改善活動の持続発展に向けた試みの一つを、前回に続きご紹介します。(前回の記事はHANDSのホームページ、フェイスブックでご覧になれます。)
↑事業地でよく目にする風景:メイズ(トウモロコシ)畑

幼稚園では、一つしかない教室に、幼稚園の運営委員、教諭、調理師、地域保健ボランティア、父母、そして幼稚園就学前の孫を持つお祖母さんが集まっていました。キプランガット地域保健担当官の進行で、話し合いはどんどん深まります。(写真1)

↑(写真1) キプランガット地域保健担当官とチェプコサ幼稚園関係者

「調理師がすぐに辞めてしまう」「長引く干ばつのためにモデル菜園はおろか各家庭の作物栽培も難しい」「モデル菜園維持のための人出が集まらない」「各家庭で負担するはずの給食用メイズ(トウモロコシ)、ミレットやソーガムの粉(雑穀粥の材料)ばかりか、給食費を持ってこない家庭が多すぎる」「そもそも、学校(幼稚園)に通うほどになった子供はもう赤ちゃんじゃないのだから、学校(幼稚園)で給食(10時のスナック)を食べる必要はないのではないか」など、給食が続けられなかった要因が次々とあがりました。そして最後に、給食を中止しなければならなかった根本原因が、どうやら水にあったのではないかという共通認識にたどり着きました。近くに流れる2本の川が相次いで涸れてしまい、調理はおろか手洗いのための水も汲めず調理師一人ではどうすることもできなかった、というのです。

キプランガットさんの訴えで園児にとっての給食の大切さを再確認した参加者は、解決のためにもっと早く話し合いを持つべきだったと口々に言いました。すると参加者の一人が立ち上がり、プラスチック製の貯水タンクを幼稚園に寄贈することを約束しました。自分のオートバイで毎日40リットルの水を遠くの川から汲んで運ぶと宣言した父親。モデル学校菜園のためにもっと適した場所を提供するといった運営委員。その他、給食再開に向け、雑穀粥の主材料であるメイズの粉の寄贈等、それぞれの家庭でできる様々な形の支援が次から次へ集まりました。最後にトオ農業局員が、「皆さん、メイズがなければ給食はできない、と思い込んではいませんか」と問いかけ、粥の栄養価を高めると同時にメイズへの依存を軽減し干ばつに備える方法として、サツマイモとキャッサバの育成に力を入れるよう訴えました。(写真2)


↑(写真2)地域で穫れたサツマイモ (左)とキャッサバ (右)。

プロジェクトの残り期間、調理師、運営委員、地域保健ボランティア対象の「栄養と農業」「栄養と衛生」という研修で、チェプコサ幼稚園の経験から学び、サツマイモとキャッサバの粉を混ぜた新しいレシピの開発と普及を計画しています。そこでできたレシピにはチェプコサ幼稚園に因んだ名前を付けることにしています。(写真3) 
←(写真3)キャッサバの粉を作るために、薄く切ったキャッサバを乾燥させるサミスベイ幼稚園の地域保健ボランティア
(続く)