JICAインドネシアカウンターパート研修−母子健康手帳の活用〜地域における活用−

2007年9月(JICA)
背景

  国際協力機構(以下、JICA)は、1998年から2003年に実施された「母子健康手帳プロジェクト」の第2フェーズという位置付けのもと、2006年10月より「母子手帳による母子保健サービス向上プロジェクト」を開始した。本プロジェクトは、これまでに、ある程度インドネシア国で普及されてきた母子健康手帳が、“多様な母子保健サービスを統合するツールとして、保健サービス制度の中に確実に位置づけられ、継続性を確保すること”を目的としている。つまり、更なる活用の質向上と、継続性に焦点を当てたプロジェクトである。

 日本の母子健康手帳は、法制度や多岐にわたる保健行政制度に支持されてきた。日本の母子健康手帳は、母子保健に関わるすべての職種の関係者からの関与を受け、母子の生活の中で当然の存在としてしっかりと根付いており、継続性が危ぶまれるようなことは全くない。本研修を通じて、インドネシア側のプロジェクト関係者が、このような日本の母子健康手帳を取り巻く制度的環境に学ぶことは、まさにプロジェクト目的と合致している。

 本プロジェクトでは、これまで、病院や民間部門またコミュニティでの母子手帳の質的活用を、中央でのアドボカシー活動、地域でのモデル活動等を通じて促進してきた。プロジェクト最終年の2008年度は殊に、母子手帳の継続性強化を、重点課題として位置付けている。そのためには、幅広い(保健省内外政府機関の)ステークホルダーからのサポートを強化することは重要である。すなわち、貧困層への母子手帳配布保障、内務省系の課題である出生登録促進への貢献、病院・職能団体の巻き込み、教育省の幼児教育プログラムとの連携、保健省情報システムへの統合、住民組織との協力等である。 

 行政の第一線で活躍するカウンターパート達が、日本での研修を受けることの意義は大きい。研修を受けたプロジェクト関係者が、母子健康手帳を活用してインドネシアの母子保健の向上にどのように貢献するのか、という明確かつ具体的な活動計画を立案することが望まれる。また、異なる背景を持つ行政官が日本での研修に参加することにより、帰国後には職種や機関を横断するネットワークに貢献することが期待される。

  本研修の特徴

(a) 講義

インドネシアにおいて母子保健事業に携わる中央政府関係者ならびに女性団体関係者を対象に、日本の母子保健制度の概要について、特に母子健康手帳との関わりという視点から講義プログラムを企画・実施した。具体的には、日本の母子保健政策、母子健康手帳の歴史と役割等に関する講義を提供し、研修員の当該分野に関する知識の向上を図った。

(b) 視察

兵庫県における母子保健政策を踏まえて、市町村および周産期センターや民間の産科医院まで、様々なレベルでの母子保健サービスに携わる機関を訪問し、それぞれの活動及び各機関の連携の実態などについて学んだ。特に、今回は昨年度実施することができなかった「母親学級」「育児教室」を視察することができ、妊娠・出産・育児の継続的なケアの中で母子手帳の活用ついて認識を深めることもできた。視察先はどこも協力的で、研修員を歓迎し、細かな質問にも丁寧に答えてくれた。

(c) 討論・実習・演習・発表

講義・見学を通じて得られた知識を踏まえ、研修内容の一層の理解向上及び帰国後の各々の活動の方向付けを目的として、研修員が個々にアクションプランを作成した。また、最終日にはアクションプランの発表が行われ、研修員・ファシリテーターたちがコメント・アドバイスを加えた。研修員の作成したアクションプランは、それぞれの立場で母子健康手帳普及のためにすべきこと・可能なことが十分に検討されており、既存の活動の利用もふくめて予算の支出も実現性の高い計画が立てられた。これにより、今後それぞれの研修員がインドネシアにおいて実施する活動内容や、母子健康手帳の効果的な普及に関する課題などが明確になった。

また、研修期間中に神戸大学医学部保健学科主催のワークショップ(テーマ:「インドネシアの母子保健を考える」)に参加し、研修員の代表がインドネシアの母子健康手帳の現状を発表した。インドネシアの母子保健に関心を持つ医学生や同学科のインドネシア留学生との意見交換も実施した。

  研修の成果

  本研修の到達目標は、下記の通りである。

−到達目標1:
 「日本の母子保健活動における母子健康手帳の役割と係る政策の変遷および現状を理解する」(講義)
−到達目標2:
 「母子保健サービスの中心となっている、地域住民と身近な市町村における様々なサービスの現状や専門職団体の取り組みを把握し、母子健康手帳プログラムを理解すると共に各活動の連携の重要性を認識する」(講義、視察)
−到達目標3:
「日本の経験に学び、さらに方法論に関する実践的講義を通じて、母子健康手帳の配布、普及に関する戦略を理解する」(講義、視察)
−到達目標4:
「帰国後に実施可能な母子健康手帳に関する実践的アクションプラン(第1ドラフト)を作成する。とくに、各機関およびプログラムや活動の連携に焦点をあてた実践的なアクションプランが期待される」(作業) 

研修は目標に沿ってプログラムが組まれ、実行された。研修中は研修員による積極的な参加が見られ、質疑応答も盛んに行われた。また研修員クエスチョネア(アンケート結果)からも、個々の視察や講義を通じて多くの学びがあったことが示されており、上記の目標を十分達成できたと思われる。
<研修の様子>