アマゾン河流域コミュニティ 母子保健・エイズ予防プロジェクト
  1.事業名
「ブラジル・アマゾン河流域コミュニティー母子保健・エイズ予防プロジェクト」
  2.事業目的
「ブラジル北部アマゾン河支流、マデイラ川流域の中心都市マニコレ市とその周辺に点在する225コミュニティーの住民に対する母子保健、エイズ予防サービスの強化」

 アマゾン河支流マデイラ川周辺のアマゾン州第2の都市であるマニコレ市の周辺には、面積48,353Km2(北海道の約2分の1)のエリアに約23,500人が50〜300人程度の小規模小部落(コミュニティー)に分かれて居住している。マニコレ市まで船で30分から十数時間を要する広大な範囲に点在しているこれらのコミュニティーの殆どには医療施設(「保健ポスト」と呼ばれている)がなく、また十分に教育された保健スタッフもいないため住民の医療サービスへのアクセスが非常に悪い状態にある。重篤な病気や緊急の場合には自力で調達した船でマニコレ市内の総合病院を受診しなければならない。このようなことから妊産婦死亡率や新生児・幼児死亡率などが高く、またエイズ感染も徐々に広がりつつあり住民に対する保健医療サービスの提供が緊急の課題である。

 本事業はマデイラ川流域コミュニティーの住民、地域自治体、地元NGOと連携して、地域保健ボランティアや伝統的産婆の知識・技能向上と保健ポストの拡充を図ることによって住民に対する母子保健サービスとエイズ予防活動の安定した提供を目的とする。本申請はその初年度として、パイロット地域におけるモデルの構築に向けた活動を対象としている。次の段階ではマニコレ市周辺マデイラ川流域コミュニティーの全てにこのモデルを展開することを目指している。またこれらのコミュニティーはブラジル・アマゾン熱帯雨林のなかに位置しており、現在ブラジルの環境NGO(Pro-Natura)が活動を展開している。この現地NGOと連携して事業を展開することにより彼らの保健分野における能力強化を図り、事業終了後も住民とともに持続的に保健医療サービスを供給できる体制づくりを進める。

  3.事業内容
1. 事業実施時期
平成13年4月1日〜平成14年3月31日

2. 事業実施場所
ブラジル国アマゾン州マニコレ市を中心とするマデイラ川流域

3. プログラム内容
(ア) 地域保健ボランティアと伝統的産婆の知識・技能向上の為の研修実施
1. マニコレ市衛生局および現地NGOと協力して、主に母子保健サービスや思春期保健を含むエイズ予防活動の分野に関する研修活動を実施する。
2. これらの地域保健ボランティアおよび伝統的産婆が質の良いサービスを提供できるよう、衛生的で必要最低限の医療器具を供与する。

(イ) 地域保健ポストの整備と機能向上支援
1. 地域保健ボランティアや伝統的産婆が流域住民に対して安定した基礎的医療保健サービスを提供する拠点として保健ポストの整備をすすめる。
2. 住民参加のもとに保健ポストの適正・効率的な運営が実施されるよう、活動計画作成、予算作成・管理、必要物資・機材の調達及び管理など、基本的な運営・管理に関する指導を行う。
3. 保健ポストにおいて、伝統的な薬草と西洋医学に基づく医薬品を補完的に使用することにより、現地の習慣や文化に配慮しかつ持続的なサービス提供が可能になるよう、技術的な指導を行う。

4. 事業規模
ブラジル・アマゾン州マニコレ市外に居住するマデイラ川流域コミュニティーの住民: 初期段階は12コミュニティー(約2、000人の住民)を対象にパイロット的な活動を開始し、段階的に周辺225コミュニティー(約2万人の住民)に裨益することを目指してモデルを構築する。

5. 事業広報の方法
日本国内においては、事業内容や成果についてHANDSが定期的に開催している「テクニカルセミナーシリーズ」でテーマとして取り上げ、政府関係者、民間援助組織、大学関係者、その他関心を持つ市民と経験や問題点を広く共有し、また公開の場で議論することにより事業の成果をより実りのあるものとする計画である。他にも、HANDSのホームページやパンフレットを通じて積極的に情報を公開してゆく。また、日本の青少年の環境問題や国際協力に対する理解を深めることを目的に、本事業の活動をテーマにしたセミナー等の教育活動を実施する。

海外においては、協力団体であるPro-Naturaの広報活動を通じてブラジル社会に情報を広く発信してゆく予定である。特に、ブラジルの日系人コミュニティーや日系企業に対しては協力の要請も含めて、重点的にコミュニケーションを開拓してゆく計画である。


6. 期待できる事業成果
(ア) これまで社会的サービスから隔絶されていたマデイラ川流域コミュニティーの住民に対して、主に母子保健サービスや思春期保健を含むエイズ予防活動などが安定的に提供できるモデルが構築される。
(イ) ブラジル・アマゾン熱帯雨林の地元住民自身が環境に配慮しつつ自らの生活環境を改善する知識と手段を獲得する。
(ウ) 現地NGOの保健分野における能力強化が達成される。

7. 申請事業の特徴
(ア) わが国のNGO(HANDS)が相手国の地方自治体(マニコレ市当局)と現地NGO、住民とのパートナーシップのもとに事業を展開することにより、事業終了後の成果の持続を図ることを明確にしていること。
(イ) 地元住民の参加を積極的に推進すること。
(ウ) 従来、分野別に事業が実施されることが多い「環境」と「保健」という2つのテーマを、「アマゾン熱帯雨林を守る」という地球的視点と「地元住民の健康な生活を築く」というローカルな視点の双方から総合的に事業として統合する、まさに”Think Globally, Act Locally”の実践と言えること。
(エ) 資機材供与や外部の医療専門家による診療活動の直接提供に重点を置かず、地元の限られた財政的・人的資源を有効に活用しながら、将来にわたって安定した生活改善とサービス提供が可能になるような「人づくり、システムづくり」に力点をおくこと。

4.実施体制
(ア) 事業運営組織
HANDS東京事務所に担当者をおき、ブラジル現地での活動に対する後方支援および協力団体等との調整などの日常業務を統括する。
ブラジル現地に常勤のHANDSスタッフを1名おき、現場レベルで協力団体や地元コミュニティーと連携しながら活動の計画・実施を行う。また、HANDS東京事務所に対する定期的な報告を行う。
現地HANDSスタッフが事業実施地域に詳しい現地補助員を採用し、よりきめ細かな事業の展開を進める。
医師、看護婦/保健婦、薬剤師などの医療専門家を定期的に日本から現地に派遣する。

(イ) 協力団体とその役割分担
HANDSは医療分野の研修を中心に、地域保健ボランティアの育成と彼らが職責を十分に果たすことのできる環境作りとして、地域保健ポストの整備を担当する。
Pro-Naturaは熱帯雨林保護の見地から、対象地域住民の生活に密接な事項に関わる環境教育を実施する。 またコミュニティー内の社会サービス(保健ポストにおける活動も含む)を支える現金収入確保の為、ブラジルナッツなどの環境保護に適した作物の栽培と市場への導入に関する指導を行う。

5.海外の協力団体の概要
(ア) Pro-Natura 
ブラジルの環境保護団体であるPro-Naturaは、ニューヨーク、パリにも支部を持ちブラジル国内だけではなく、アジア、アフリカでも森林保護などのプロジェクトを行っている。Pro-Naturaは現場に適した小規模モデル地域を作り、それを拡大するという活動戦略を持っている。(組織概要書添付)

6.事業実施日程・工程
平成13年
4月−5月 研修計画策定および保健ボランティアの募集
パイロット地区内の保健ポスト拡充ニーズ調査
6月 マニコレ市衛生局研修担当スタッフおよびPro-Natura担当者に対する研修指導技術の教育
7月−8月 保健ボランティアと伝統的産婆の集中研修
保健ポスト拡充および供与機材の提供
9月−12月 保健ボランティアと伝統的産婆の実地活動開始(市衛生局スタッフおよびPro-Natura担当者を通じたサポートの提供も同時に行う)
住民、市衛生局スタッフおよびPro-Naturaに対する保健ポスト運営管理のトレーニング実施

平成14年
1月 事業成果の評価
2月−3月 次フェーズの活動計画策定

7.事業終了後の計画
本申請は、5年計画の事業全体の初年度に該当する。上記のとおり、初期のパイロットプロジェクトで構築されたモデルを、段階的に他の流域コミュニティーに拡大することが計画されており、貴財団の継続的な支援を希望する。

8.事業成果の活用方法
ブラジルでは州・市レベルへの地方分権が進行しており、また環境と保健に対する高いニーズは他の地域にも共通して存在することから、5年計画の事業終了後にはこのような地域に根ざした多分野横断型事業の成果はブラジルの他の地域にとっても非常に有用なモデルとなり得る。
さらに、日本の官・民両セクターよる途上国援助活動にとっても、援助プロジェクトの新しいアプローチとして検討材料とすべく、広く情報を公開し専門家や国際活動を行う市民団体などとともに十分な議論を展開してゆきたい。

9.その他
HANDSは、途上国の保健医療ニーズに対して質の高い技術協力を提供し、かつ厳格な内部管理を実施する新しいタイプの日本の国際開発NPOを目指して設立された。HANDSは様々な現場経験を持つ数多くの日本人保健医療協力専門家と広いネットワークを持ち、また海外のNPOとの連携を誇る。HANDSは日本国内および海外の実力のあるNGOと積極的にパートナーシップを築き、それぞれの専門性を補完しながら対象住民がもっとも裨益する有効な活動を計画・実施することに重点をおいている。その意味でも、HANDSは日本の国際開発NGOコミュニティーにおけるパイオニアたらんと考えている。このHANDSの海外における長期フィールドプロジェクトとして、このブラジルプロジェクトは非常に重要な意味を持つ。官・民両セクターの支援を得てこのプロジェクトを実施することが非常に重要であり、そのためにHANDSに対する貴財団よりの助成が不可欠である。