ホームイベント報告 > 活動報告会「人間中心の国際保健医療協力をめざして」

活動報告会「人間中心の国際保健医療協力をめざして」


●○●○●○●○●○●○●

◆はじめに◆

2006年4月8日(土)、文京シビックセンターシルバーホールにてHANDS活動報告会「人間中心の国際保健医療協力をめざして」が開催された。あいにくの天気だったのにもかかわらず62名という多くの方の参加があり、報告会は大盛況のうちに終了した。様々な角度からの意見交換が行われたことで今後のHANDSの活動推進においても非常に有益な経験となった。

●○●○●○●○●○●○●

◆報告会内容◆

1. ケニアプロジェクト報告

(1) プロジェクト概要説明

島本護ケニアプロジェクト・マネージャーより、ケニア国西部地域保健医療サービス向上プロジェクトについての概要説明があった。

はじめに、妊産婦ケアを中心としたケニアの保健事情、そしてプロジェクトが展開されているキシイ県・ケリチョー県両県の特徴についての説明があり、当該地域で妊産婦ケア関連サービスを向上させること、そして両県の地域的特性を考慮に入れつつ活動を展開をすることの重要性が指摘された。

次に、プロジェクトの全体像についての説明があった。プロジェクトの性格として、キシイ・ケリチョー両県のヘルスセンター及びコミュニティレベルに対する活動に力点を置いていることが強調され、既存のシステム改善のため、機材供与、施設整備、トレーニング実施といった活動が行われていることが示された。

今後の方向性として、ヘルスセンタースタッフの能力向上トレーニングなどの人材育成面の強化に重点を置いた活動が行われること、さらには活動地域のモデルヘルスセンターから他地域へ活動を展開することが視野に入れられていると説明があった。

>>島本プロジェクト・マネージャー発表資料(PDF)

島本PM報告の様子


(2) 妊産婦ケア活動報告

千葉陽子前妊産婦ケア専門家より、妊産婦ケア関連活動についての報告があった。

まず、安全な母性(safe motherhood)に関する世界の状況(妊産婦死亡率、死亡原因、熟練助産師の立会いなど妊産婦ケア実施状況と死亡率の関係など)が詳細なデータで説明され、ケニアを含むサハラ以南アフリカ地域における状況の深刻さが示された。

次に、キシイ・ケリチョー両県で2005年6月に実施された基礎調査の結果得られたデータが紹介された。ここで特に強調されたのが、現実には望ましいケアを提供するようなインフラストラクチャーが女性たちの身近においては整備されていないという点である。そこで地域の保健センターの能力向上に働きかけ、また、コミュニティに対する活動を実施することで、保健センターにおいて十分な妊産婦ケアを提供できるような体制を整えるというHANDSケニアプロジェクトの意義が示された。

>>千葉前専門家発表資料(PDF)

千葉前専門家報告の様子



2. ブラジルプロジェクト報告

定森徹ブラジルプロジェクトマネージャーより、マニコレ市住民の保健状況、プロジェクトの特徴および成果に関する説明があった。

マニコレ市住民の保健状況として、失業率の高さなどを原因とする望まない妊娠やアルコール中毒、栄養失調と肥満・高血圧・糖尿病の並存、マニコレ河流域に小規模に点在している遠隔地コミュニティの保健サービスに対するアクセスの悪さといった問題点があることが示された。そこで、住民に対し基礎的な健康相談や支援を行うようなシステムを拡充させる為にマニコレプロジェクトが開始され、コミュニティレベルでそうした役割を担うコミュニティ保健ワーカー(CHW)に対するトレーニングや支援をローカルスタッフ主導で行ってきたことが説明された。

具体的には、CHWに対するトレーニングやスーパーバイズ、住民集会の様子などが写真を交えて説明され、ローカルスタッフやCHW、住民の自発性を重視しているというプロジェクトの性格が強調された。そして、成果として住民のCHWに対する満足度が向上したことが示され、プロジェクトの目標達成度が高いことが提示された。

>>定森プロジェクト・マネージャー発表資料(PDF)
>>レジュメ(PDF)

定森PM報告の様子



3. 指定発言

国立民族学博物館白川千尋助教授より、『国際保健医療協力と文化人類学的視点』という論題で指定発言を頂いた。

日本の国際保健医療協力は、多くの場合、生物医学・西洋医学を基準にした「生物医学中心主義」、そして、病原体を主な対象とする「病原体中心主義」に基づいているとの指摘があり、こうしたアプローチの限界が示された。そして、プロジェクト推進の際の住民ニーズを把握するための手段としてではなく、真に人々の立場に立って活動を実施し、彼ら自身が主体的に活動に取り組めるようにするためには、フィールドワークによって彼らを深く理解し、全体論的な視点を持ち、視点を絶対化しない文化人類学的視点を活動に導入することの必要性があるとのお話があった。

>>白川先生発表資料(PDF)

白川先生報告の様子


4. ディスカッション

報告会の表題である「人間中心の国際保健医療協力」という論点に関して、中村安秀HANDS代表の司会のもと、パネリスト達のディスカッションがあった。

白川先生より、HANDSの活動は「人間中心の」とは言うものの文化人類学的なアプローチには至っていないのではないか、さらなるオペレーショナル・リサーチが必要なのではとの指摘があった。

これに対し、千葉前専門家より、現状として、ドナーに対する責任として目に見える成果が必要なためこうしたリサーチに時間を割く余裕はなく、どのように折り合いをつけるかが今後の課題であるとの意見が出された。

白川先生からは、成果を出すのは大切であるが、この問題に対する専門家の認識が重要であり、また、調査を実施するスキルを身につけた人材の育成が必要との提言をいただいた。

パネリスト1 パネリスト2
パネリスト3 会場の様子

●○●○●○●○●○●○●

◆おわりに◆

プロジェクト・マネージャーが保健医療従事者ではないという点に関し、保健医療専門家でなくても国際保健医療協力ができることに対する会場の反応が大きかったのは印象的であった。これは、コミュニティレベル、住民レベルでの保健状況の改善に取り組んでいるHANDSの活動の特徴を示す一例であり、報告会を通じてその意義を再確認することができたと言えるだろう。とはいえ、白川先生からのご指摘のように、それがプロジェクト従事者の自己満足ではなく、真の意味での「人間中心の国際保健医療協力」となっているかを多角的、包括的に検証できるような体制を作らなければならないという、今後の活動の方向性を示唆いただいた有意義な報告会となった(文責:溝上)。



当サイトは特定非営利活動法人HANDSの公式サイトです。
Copyright (C) 2002-2008 HANDS. All rights reserved.