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活動ニュースケニア

ケニアからの活動報告:現地職員たちと共に-ゾウで行動変容

HANDSケニア事務所から活動報告が届きました。

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久しぶりに、ニャベリ幼稚園に建っているトイレ(汲み取り式)を訪れる機会があった。コロナ感染予防のために2020年3月から学校が閉鎖。子どもたちの声が聞こえなくなってしばらくになる。長く使われずにいたこのトイレは、残念なことに十分な維持管理は施されていたとは思えない。早速HANDS建設担当職員から幼稚園を併設しているニャベリ小学校長に問い合わせをした。実はこのトイレ、HANDSケニアにとっても、赴任して間もなかった私にとってもそれぞれに思い出深い建造物である。

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2019年1月から始まった平成30年度NGO連携無償資金協力のプロジェクト-「ケニア共和国ケリチョー郡ECDEセンターを中心としたコミュニティによる幼児栄養改善事業」。3月、いよいよ先行事業による対象ECDEセンター (4,5歳児対象公立幼稚園)から選んだ6か所に対し、園児を取り巻く衛生環境整備に着手した。ECDEセンターを併設する小学校の運営委員会から提出された申請内容とHANDS独自で行った調査や関係者の意見等を基に、学校や地域住民の栄養改善活動への参加姿勢、学校のリーダーシップ、期待できる維持管理能力、そして学校側のニーズという角度から、雨水貯水タンク2基、トイレ4基、給食調理室1棟の建設と通学路整備1か所が決まった。

6月、ニャベリ幼稚園のトイレは、完成第一号を目前にしていた。幼稚園の教室を出るとすぐに見える広い壁。園児たちがトイレを利用しに教室を出ると一番に目にするこの壁を活用する案を、HANDSプロジェクトマネージャーに依頼された。(写真1)個室の内部

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早速、職員たち有志で「ニャベリ Graphic Communication Task Force」というチームを結成。栄養士、公衆衛生官の資格を持つ者、施工管理者、総務担当者、そしてアグロフォレストリーのテクニカルアシスタントが揃った。園児たちに正しいトイレの使い方と手洗いの習慣をつけてもらい病気を予防することで、健康に導こうという狙いのトイレ建設。園児たちが、初めて使用する「汲み取り式トイレ」(写真1)という所に怖がらずに行けるよう、衛生的に使用できるよう、そして忘れずに手洗いをするよう、私たちは知恵を絞った。

phot2.jpeg(写真2)ブレインストーミングで出てきたアイデアカード

HANDSの事業地では、NGO(非政府組織)による衛生施設建設はHANDSが初めてではない。ある国際NGOがすでに小学校にトイレを建設している。その壁にはその学校の制服を着た小学生が描かれており、吹き出しには「トイレ使用後は石鹸で手を洗いましょう。きれいな水を飲みましょう。」と書かれている。ところが私たちの対象はというと、まだ字が読めない。「石鹸で手を洗いましょう」と、絵だけでどう伝えるか。いろいろなアイデアはブレインストーミングの後に生まれてきた(写真2)。

手洗いの正しい順番を示す絵を描こう。手を洗った子が元気になって、洗わなかった子が病気になる絵を描こう(原因と結果)。幼稚園の制服を着た健康そうな子が手を洗っているところを描こう。お父さんとお母さんが、手を洗っている子を優しく見守っているところを描こう。私はこれらの中から行動変容理論に関連すると思えるアイデアを取り出し、社会的学習理論(Social Learning Theory)と ヘルスビリーフモデル(Health Belief Model)を簡単に紹介した。原因と結果を時系列で表現する案は、職員の間では一番人気だった。ただ、絵は絵巻物のようになってしまい壁という空間にはあまり向かないだろうと考え、園児たちの親しみの持てる「モデル」となるような「何か」が楽しそうに手洗いをしている様子を描くことにした。一方原因と結果を時系列で表現するためには絵よりも指人形劇が相応しいと考え、創作し上演することにした。さて、「モデル」となるようなものはいったいどんなモノか。人気のスポーツ選手や映画俳優にあこがれる年齢でもなし・・・。制服を着た元気な園児の姿がよいのではないかという意見が多かった。ところが、肝心の絵描き兼ペンキ屋さんの腕に不安がある。顔の表情が決め手と思われる人物像はあえて避けたほうがいいのじゃないだろうか。

phot3.jpeg(写真3)ニャベリ幼稚園の汲み取り式トイレ

じゃあ、動物にしよう。そして思いつくあらゆる動物が親しみやすさの観点から検討された。結果、ゾウの鼻から出た水で石鹸を泡立てて楽しそうに手を洗ううさぎと、列を作って待つリスやかめ、手を洗い終わった犬やサルは嬉しさで飛び跳ねているというシーンが出来上がった(写真3)。そして仕上げには、園児たちによる手形を散りばめた。

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(写真4)個室のドアの裏側

さらにShikakeologyという新しい分野にヒントを得て、各個室のドアの裏には、園児が「きちんとしゃがんで用を足す」のを促すよう、壁の絵に登場した動物のうちどれか一つのしゃがんだ後ろ姿を描いた(写真4)。

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(上写真5)洗面台へと導く足跡       (下写真6)壁に書いた手洗いの手順

トイレを出てから洗面台までは、さわやかさを表現した緑色で足跡を描き(写真5)、洗面台の正面には手洗い歌を歌いながら洗うことを先生が指導する際の助けになるよう、さらに手洗いの手順は園児の理解を助けるよう簡略化した絵を描いた(写真6)。

phot7.jpeg(写真7)障がい児用トイレのマーク

そして、障がい児用の個室のドアには、車いすに乗った子供だけでなくそれを取り囲むように子供が立っているマークを創作した。障がい児を特別扱いするのではなく、みんなで助け合いながら使おう、という校長先生の願いも込めた(写真7)。

職員たちのこれらの工夫がどこまで園児たちの行動変容を促すことにつながったかは検証してはいない。しかし、開発事業でのサステナビリティが強調される現場。本当のサステナビリティとはいったいどこから生まれるのだろうかと考える。もしかしたら日々地道にプロジェクトを実施している小さなNGO職員一人一人の知識や経験の中にヒントがあるのではないかと思う。そしていずれ私たち外国人が去った後に、さらにその知識を磨き経験を振り返り、強く深く多くの人々に影響を及ぼしていくのは彼ら一人一人なのではないかと思う (写真8)

phot8.jpg(写真8)シロアリマンことジャスタスさんと保健局員のエラストさんとHANDS職員

八木志津子 栄養プログラムマネージャー

[活動ニュース]